ライズエイジア

2004.Jul

■2004年7月号:1/2

特別寄稿・AKIRAのフィリピンレポート

約一年ぶりにマニラに来ています。そんな訳で、ライズ・エイジアニュース16号はマニラでTOSHIと一緒に編集します。ご期待下さい。

久しぶりのマニラ空港では、「鳥インフルエンザ」予防のため、消毒マットが床に敷かれるなど検疫体制が強化されているほか目立った変化もなく、いつものようにフレンドリーな空港職員のスマイルとジョークで出迎えられました。
ホテルにチェックインして、部屋に入りコンピューターをセット。インターネットの接続をするものの、どうもうまくアクセスできずちょっとイライラ。天気は台風7号が接近してきているのでどんよりと曇っている。東京の方が暑いくらい。タクシーでマビニの両替商に。1万円が5,195ペソ。またまたペソの下落が進行していて驚いた。これでは、ガソリンをはじめ輸入品の値段が上がるのも無理はないと実感。フィリピンの人々には申し訳ないが、かつて1万円が1,800ペソの時代からフィリピンを訪れている僕としては、なんか儲かった気分。

夜、TOSHIと再会。TOSHIはこの4月から禁煙を始めたそうで、とても元気そう。ますますフィリピン人みたい。(たばこをやめて少し太ったみたい。本人曰く、ますますご飯がおいしく食べられますとのこと)。夕食は、フィリピン料理を食べに行きたい僕と、せっかくだから日本食を食べたいというTOSHI。その間をとって焼き肉を食べに行く。(どこが間だか・・・)
とにかくTOSHIが元気そうなのでちょっと安心。目一杯食べて、明日からのスケジュール等の確認をして解散のつもりが、ライブを見に行こうと盛り上がり、マカティ市のハードロック・カフェに向かう。マカティ市は禁煙条例が制定されて、レストランやホテル等公共の場所では基本的に禁煙。喫煙は喫煙ルームのみ。ハードロックカフェではステージが見えにくいバールームが喫煙ルーム。てな訳で、喫煙者の僕は、せっかくライブを楽しみにきたのに、音も聞こえにくく、ステージも見えないバールームへ。マカティ市に住むTOSHIが禁煙したのもわかる気がしました。すべてにおいておおらかなフィリピンでも、さすが経済の中心地マカティ市ではちょっと違うようです。

(6月28日 マニラにて 桑原 彰)

スモーキーマウンテン現地レポート

今回の現地レポートは、1年ぶりにフィリピンを訪問した桑原がお送りします。 1年ぶりのスモーキーマウンテン仮設住宅は、台風の影響で、そこら中に大きな水たまりが出来ていて、道路も一部冠水していました。そんな事もあって、第一印象は「随分、荒れたな。」でした。慣れるまではちょっとしんどい臭いと湿気。とにかく仮設住宅内を歩き、久しぶりの再会の挨拶をしながら、近況や困っている事を聞いて廻りました。本住宅に引っ越しが終わり住人のいなくなったエリアは、ほとんど廃墟のようで、日陰で休んでいる住人も、昔ほどの活気を感じることが出来ませんでした。今回のレポートでは、そんな「気になった変化」や「感じたこと」を中心にまとめてみました。

■(1)仮設住宅の現状

これまでライズエイジアニュースでもレポートしてきたように、仮設住宅では、本住宅への引越しが進んでいます。本年五月までに仮設住宅の住民の半数以上が引越しを終了しています。

一年前は、全ての通りに人が溢れ、たくましく生きる人々のエネルギーが感じられたのに、今回はそれが感じられませんでした。

住民が少なくなった事と、賑わいや活力を発信していた「お店」や「露天商」がほとんど無くなってしまったことがその理由だと思います。

写真左:人影もまばらな仮設住宅

「いつ仮設住宅が撤去されるのかわからないので、将来が不安だ」「お店や教会も移転してしまうので、どんどん不便になる。追い出されるのかもしれない。」「電気や水道が止まってしまうのではないか」「本住宅に移住したいが定期収入がないから今は無理。そして、これ以上本住宅の建設も進まないのではないか。だから、もし定収入を得られるようになっても移住は出来ないと思う。」

残念ながら、予算難から行政側からは明確な計画が示されていません。本住宅の建設も、仮設住宅の住民の言うとおり現状ストップしています。仮設住宅に残された人々は将来の不安をそれぞれ口にします。大きな不安を 抱えたまま日々の暮らしを送っていれば、「元気」や「暮らしのエネルギー」もしぼんでしまうのも無理はナイと思いました。

■(2)教会も本年土中には、本住宅隣接地域に移転

スモーキーマウンテン仮設住宅内にある教会の神父、ベン神父にお話を伺いました。

教会も本年末には、本住宅エリアに移転することが決定しており、建設は順調に進んでいるとの事。建設に際しては、地球環境に配慮した様々なアイデアを取りこんでいる事を熱っぽく語っていただきました。 しかし仮設住宅に残る住民の話題になるとベン神父も口が重くなります。「教会としても仮設住宅の住民が安心して暮らせるよう多方面への働きかけを続けている。けれど、なかなか解決策が見つからず困っている。教会に併設される施設は、本住宅住民、仮設住宅住民に係わらずもちろん開放される。」

と話されました。そして、今最も大事なことは、本住宅住民と仮設住宅住民が対立したりしないように公平性を維持することだとおっしゃっていたのが印象的でした。

▲写真:ベン神父(右)にお話を伺う筆者

■(3)新しいゴミ集積地は、昔と同じ状況になってる!

一度閉鎖された「スモーキーマウンテン」ですが、新しいゴミ集積所が、かつての「スモーキーマウンテン」と同じ状況になっています。

「ゴミが自然発火して煙を出しながら燃えている」あのスモーキーマウンテンほどではありませんが、広大なゴミ集積所には、メトロマニラから集められた大量のゴミが無秩序に集積されています。

今もマニラでは、日本と異なり「燃えるゴミ」も「不燃ゴミ」も「再資源ゴミ」も一緒に破棄されているのです。 いくらスモーキーマウンテンを閉鎖し、新しいゴミ集積所を作っても、ゴミ収集や処理の方法を抜本的に変えなくては同じ事の繰り返しとなります。

ゴミの分別収集と、分別作業を「清掃業」として明確に位置づけ、労働環境や労働条件を整備していかなければ、劣悪な環境下での「ゴミ拾い」はなくなりません。

スモーキーマウンテンでのかつての私達の活動は、ゴミ集積所に暮らしていた最悪の生活環境の改善でした。本住宅が建設され少しづつ住環境の改善が進み出した今、次のステップとして、児童労働の根絶と労働環境の改善に向けた活動が求められていると思います。

●10年以上変わらない労働対価

ゴミ収集車がゴミを降ろしに来るたびに、多くの大人やこどもたちが、プラスティックや金属、その他再資源として売ることができる「ゴミ」を拾いに集まってきます。手にした「引っ掻き棒」でゴミを分けながら、金目のゴミを探し、「売り物」を袋に入れていきます。そして袋が一杯になると、集積所のそばにある資源買い取り業者のところに運び込みます。

一日、ゴミを拾い続けて平均大人で100ペソ、こどもで20ペソの収入となります。(マニラ首都圏の最低賃金が1日あたり税込み250ペソです) 家族が暮らしていく最低限の収入を得るためには、「こどもも働かせねばならない。」そんな現実がスモーキーマウンテンにはあります。午前中に学校に行ったこどもたちも午後からは、この集積場所に集まってきます。

また、「学校に行かずに働けば、もっと現金を手に出来る」という現実から、家族のために学校に行くのをやめてしまう児童もいます。昔と変わらない現実。そして現実の前に立ちつくしてしまう自分。1年ぶりのスモーキーマウンテンは、多くの課題を僕らに投げかけてきました。

少し暗くなっていた僕にTOSHIが声をかけてきました。

「10年前と結論は同じ。僕たちの身の丈にあったことを少しづつ続けるだけですよ。」

毎週スモーキーマウンテンを訪れているTOSHIにとってこの現実は、僕以上に歯がゆいに違いない。「劇的な変化などありえない。そして時には後戻りもあるだろう。でもスモーキーマウンテンのこどもたちにとって良いと思われることを続ける。それしかないじゃないですか。」TOSHIが僕を励ますように明るく話してくれました。1年間ぶりの訪問で、一番強く思った事は、ほんとうにTOSHIがたくましくなったって事でした。 コツコツと活動を続ける中で、TOSHIがどんどん磨かれたんだと思います。仮設住宅の住民も本住宅の住民もTOSHIに気楽に声をかけてきます。みんなに信頼されていることがよくわかりました。

TOSHIなら、両住宅の住民の架け橋になれるんじゃないかな。そんな希望も感じました。「TOSHIの活動をしっかり支えること。」これが現地を訪問しての結論でした。